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本日の一冊

『菊』『刀』ではなく『鏡』〜偏見に満ちた歴史を正論で正す...マッカーサーが翻訳を禁じたヘレン・ミアーズの1948年の著作〜

*TAO LABより
第二次大戦中の米国戦時情報局による日本研究をもとに執筆され、後の日本人論の源流となった不朽の書といわれているルース・ベネディクトの 『菊と刀』...今回紹介するのは『菊と刀』とほぼ同時期にアメリカにて発売されたヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡:日本』。
『菊と刀』はいまだに世界中で読みつがれていますが、『アメリカの鏡:日本』は日本はもとよりアメリカでも忘れ去られた一冊となっていました...

この書籍の存在を知ったのは三上照夫さんの著作『第三の文化の時代へ』によります。

1994年、三十四歳の秋に立て続けに起こった山下奉文さん、東条英機さん、松井石根さん、昭和天皇等々との次元を超えた霊的な邂逅体験から生じた先の大戦に対する意識の変化、また個々の方の精神性・人間性を知り、また「今」の彼らの思いを知ってしまったことから、この30年間、随分と多くのそれらに関係する書物を読み、調べ、また、身体を使って国内外各地に行き、自分なりに感謝と慰霊を行ってきました。
戦争そのものはもちろん起こらないに越したことはありませんが、侵略とともに自衛という側面が国と国との戦いにおいてはあること、また、その戦いで亡くなった方たちが無駄死だったと後生の私たちが勝手に決めつけることは誠に申し訳ないという思い、あります。

で、この書籍、読みたいと思っていた矢先、先日の「むすびの里」に伺った折、図書室で見つけ、早速手に取り、読み始めた次第です。
滞在時に完読すること出来ず、下記、電子ブックで手に入れた次第です。

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アメリカの鏡・日本 完全版:ヘレン・ミアーズ
〜ペリーによる開国を境に平和主義であった日本がどう変化し、戦争への道を突き進んだのか。日本を西欧文明の鏡と捉え、満州事変を軸に中国・韓国との関係を分析しながら、アメリカが変えんとするその未来に警笛を鳴らす〜

占領終結後の1953年、『アメリカの反省 原百代訳』と題して一度出版されたが、上記『菊と刀』と違い、その後アメリカでも日本でも、なぜか彼女のことは急速に忘れ去られた...戦後50年の節目となる1995年にあらためて『アメリカの鏡・日本 伊藤延司訳』として再出版され。今では角川文庫の一冊として読むことが出来ます。

そもそも黒船来航から占領に至る日本の近代化は、明らかにアメリカを始めとする西洋を鏡としてきました。しかし日本と西洋の関係が破局にむかう中で、アメリカ(西洋)は常に異質の国として日本をとり扱い、アメリカ(西洋)は、実は自分の似姿として鏡に写る日本を、そうとは知らず裁いてきた...『菊』『刀』ではなく『鏡』...神社に手を合わせ、対面する存在は『鏡』です。
『カガミ』のなかの『ガ』をとること...アメリカ、日本のみならず世界人類の生まれてきた大きな目的のひとつを結果、象徴的に現しているこの書物、あらためて読んでみませんか?

ヘレン・ミアーズさんについて情報少なく、あらためて知った下記の著作も手に入れ、このタイミングで読みました。
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忘れられた日米関係: ヘレン・ミアーズの問い:御厨 貴+小塩 和人

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