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本日の一枚
幽玄・深遠な世界...黛敏郎〜涅槃交響曲〜1958年作
*TAO LABより
黛敏郎さん〜といったら「題名のない音楽会」
黛さんは日本の風土、日本人の心、日本人の思想を、西欧的方法であらわせる数少ない音楽家の一人です。
1949年のフランス留学は教育内容への反発から、1年で退学。
帰国後はミュジーク・コンクレート、電子音楽、ヴァレーズの音楽様式、ケージの偶然性の音楽やプリペアド・ピアノなど、最新の前衛音楽様式を次々と日本に紹介する存在となりました。それらの西洋前衛音楽へのアプローチは、構造的な理論より音響への興味を優先させたものだったそうです。なかでも電子音楽、ミュージック・コンクレートを、いち早く日本の音楽界に導入した方です。
文化人としては憂国+保守で1981年あらたに結成された「日本を守る国民会議」の議長を務め、この会はその後1997年「日本を守る会」と発展的統合をし「日本会議」となりました。
三島由紀夫さんや岡潔さん、掘っていたら黛さんのお名前何度も登場〜黛さん、伝統と前衛、東洋西洋を消化しつつ和を尊ぶ、カッコいい日本人の一人だとあらためて想い、惹かれました。
氏の代表作であり、オーケストラと合唱を駆使して壮大な東洋的世界を表現した『涅槃交響曲』に、薬師寺の声明『薬師悔過』をカップリングしたこの音を今回はご紹介。
「黛敏郎《涅槃交響曲》と《曼荼羅交響曲》の成立過程比較 ... Campanology 資料の分析を中心に」
高倉優理子より転載
1958 年に第3回「3人の会(芥川也寸志、團伊玖磨、黛敏郎が1953年に結成したグループ。1954年から1962年まで5回の演奏会を行い、自作を発表した)」演奏会のなかで初演された『涅槃交響曲』。
6 楽章から成る作品である。「カンパノロジーI~III」と題された奇数楽章は、器楽オーケストラのみで演奏され、「首楞厳神咒」(第 2 楽章)、「摩訶梵」(第 4 楽章),「終曲(一心敬礼)」(第 6 楽章)と題された偶数楽章は器楽オーケストラに声明を素材とした男声合唱を付加して演奏される。
この男性合唱を伴った大編成のオーケストラは、3 グループにわけられて聴衆を取り囲むように配置される。各オーケストラ・グループの編成は、グループ1が木管楽器中心、グループ2が弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器と男声合唱、グループ3が金管楽器中心と なっている。
これらのオーケストラの配置についてペータース版の出版譜には、バルコニーのある 会場の場合と1階席のみの会場の場合の 2種類の図が示されている。例えば 1 階席のみの会場図の 場合は、グループ 1 をステージに向かって右手後方、グループ 2 を前方のステージ上,グループ 3 をステージに向かって左手後方に配置するよう指示されている。
これらのオーケストラ・グループ間を和音が空間的に交応することによる音響効果について,黛は初演時のプログラムのなかで「カンパ ノロジー・エフェクト Campanology effect」という独自の用語を用いて説明している。
こちらは初演ではなく2012年に再演された録音です。
*おまけ
兄弟作品に『曼荼羅交響曲』がある。『曼荼羅交響曲』は『涅槃交響曲』初演から 2 年後の 1960 年に第4回「3人の会」演奏会に おいて初演された。
2 楽章構成の作品であり,第 1 楽章は「金剛界曼荼羅」、第 2 楽章は「胎蔵界曼荼羅」と題されている。この作品は『涅槃交響曲」』とは異なり器楽オーケストラのみで演奏される。
こちらも初演ではなく、2010年に再演されたものです。