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青山堂運歩 by 川島陽一
軸と生命力
ひととしてのわたしたちのからだは、脳も心臓も或いは内臓もすべてわたしたちの意思とは全くといっていいほど無関係に、その貴重な役割を果たしていることに、時として驚かされもします。
ひとのからだが持つ能力のなかで大きな役割を果たすもののなかに自然治癒力があります。いまだ病ではないとされる未病の際でもたとえ大病を発症したのちでも、自らよくなろうと、この力がからだじゅうに、からだ全体の隅から隅までありとあらゆるところへと、この力が作用していきます。
どんなに健康なひとでも睡眠不足になればからだの怠さを感じましょう。ゆっくりとおやすみをとることで怠さがとれ、本来そわっている健康を回復します。切り傷などの怪我はわたしたちにつきものですが、その際にも時とともに傷を回復させることのできる治癒力がそなわっておりますから、おのずと時間が解決してくれ、傷は元に戻ります。
体調不良のとき、環境や生活状況を整備しても回復がおそかったり改善がみられなかったりする場合、スタグネーションと呼ばれる自然治癒力の停滞が起きていることが想定されます。頸部前彎(けいぶぜんわん)療法では、この自然治癒力の停滞、それは脳からの命令の停滞であるとみなし、神経電流の伝達不良伝達障害を改善することにより、つまり、神経電流の伝達障害をひきおこすと考えられる、頸椎第一番および第二番=軸椎のわずかのずれを正しい位置に戻し、或いは、整えることで、ひとが生来的に、備えている自らを癒す力=自然治癒力を発揮させるものです。
わたしたちがうまれてからおよそ三、四ヶ月経ますと赤ちゃんの脊柱に第二次の湾曲が起こります。人類のみがもつ、実に直立歩行の準備なのです。このようなときにわたしたちは、父祖にもつ日本人の日本語の語感に絶大な感謝を覚えます。赤ちゃんの【首が座る】とわたしたちは知っています。
頸部前彎療法はこの【首が座る】に着目いたしました。首の座った赤ちゃんの頸椎の中心には頸椎第二番が存在するのです。医学書、あるいは頸椎、でインターネットをお調べになられるとよくわかます。この骨、頸椎第二番はじつに大きいのです。医学用語では、アクスイーズ、アクセス。訳せば【軸】、頸椎第二番は【軸椎】と命名されております。再び私たちの日本語の素晴らしい語感にもどると、先人はこの骨のことを【仏の座】(のどぼとけ)となずけました。
眼鏡橋などに代表されるように人間の頸椎の彎曲は、その重い頭部を支えるもっとも適した形状であるだけでなく、本来の前彎に整えることで自然治癒力が滞りなくからだじゅうに発揮されることになるのです。
ひとの骨格は単一では存在せずにすべてが連動して繋がっています。頸椎が整うことでまるでほかの脊柱の骨骨はあたかも、ドミノのように整っていき、脊柱、腰椎、膝と本来の骨格へと整列していくのです。まさに、その中心に、【軸椎】があるのです。
赤ちゃんの首が座るとどうなるでしょうか。首のすわりは、英語で【ヘッドコントロール】といいます。首がぐらぐらせず、自分でコントロールして動かせるようになります。すると、赤ちゃんの世界は二次元から三次元へと大きく変化します。ねんねが中心だったころの世界は、映画のスクリーンを見ているように平面でしたが、今や広がりの奥行き、高さを認識します。
逆に考えてみましょう、成人で首が座らなくなった今日この頃を。整形のお医者さまは、必ず、ストレートネックといいます。今や、大人は二次元的になっているのではないでしょうか。頸部前彎療法はストレートネックを前彎へと調整しますから、失われていた三次元の世界も取り戻せるのではないだろうか、と。
生来の、生得のという意味の英語にinnateという単語があります、自然治癒力=イネイト・インテリジェンスと置き換えるとわかりがよろしいでしょうか。ユング心理学に至ると、もっと拡張して、ユニヴァーサル・インテリジェンスといったりします。わたしたち頸部前彎療法における中心は、【軸椎】。日本語ならば、【仏の座】(のどぼとけ)。【軸椎】を中心とした人体という小宇宙は実にその周縁を宇宙のエネルギーの広大無辺の空間に満たされていて、わたしたちは宇宙的生命のただなかに軸とともにある、とわたしは夢想したりします。
生命力或いは生成力というようなものに対し、心と交渉を持つ。大海をみるとこころがやすらぐのは、木、森、海をみることによりそれらの持つみずみずしく若々しい生命力をみずからの身に受けるということに他ならない。その気持ちを相手に贈るような気持ちで対象を見る。だからその下に心をつけると、【想う】となる。想うとは、自らが思うのではなしに、他の遥かなるものを想う、相手を想うときに使うのだ、と考える。
木や森を、海をみて、それらにより象徴される生命力を自らのものとし、その生命力を自分の思う人に届けようと考えながら見る。そんなことを想いながら、いつの日にかわたしの整体=調律がみなさまの魂にふれることを願っている。
*頸部前彎療法 川島整体院・青山堂
代表:川島 陽一
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