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本日の一本
追悼 佐藤忠男さん〜小津安二郎監督のファッション・色彩・美術・装飾・構図
*『僕はとうふ屋だからとうふしか作らない。』
小津安二郎監督作品にここのところハマってます。
若い頃は「動」ともいえる黒沢明さんや溝口健二さんにシビれてましたが、あらためて還暦迎え、「静」ともいえる小津安二郎さんの作品の中にある種の美しい狂気とも言える凄さに感服しています。
黒澤監督の作品に比べれば物語としてのダイナミックさが小津監督の場合、無く...小津調とも言える、どの作品を切っても金太郎飴のような共通した物語とそれを同じ役者が演じ、とともに「カメラの固定」「ロー・アングル」「長回しワンショット」「相似形の人物配置」「正面からの人物撮影」等々、同じ映像技術を使って創られている。
ある意味、淡々と記録されている、フツーともいえる日常を自然に描いているが、そこにはとんでもない緻密な計算があるという数学的な作品なんだぁと納得しています。
冒頭に小津監督が語っていたコトバを引用しましたが、さらにそれに続き『とうふ屋にカレーだのトンカツつくれったって旨い物が出来るはずがない。』との語りに超納得します。
作品の内容が同じなら数本観たら、飽きるはずなのに、何故、飽きないのか?
それは動画=物語に引き込まれるのでは無く、色彩・美術・装飾・構図=静止画とも言える映像美学に吸い込まれていくという感覚です。
ポットやバック〜その他
赤をポイントに...
さらに、監督のファッション美学は?
小津安二郎が撮影現場に入るときにいつも身につけていたのが、ピケ帽と白いシャツ。一説にはピケ帽は銀座トラヤ帽子店の特注、白いシャツは「オーミヤ」で仕立てさせていたとのこと。帽子もシャツも自分で洗い、カタチを整え、アイロンをかけていたと推測されます。ダンディな方です。
ちなみに小津監督は60歳で亡くなるまで独身でした。
2013-2014 小津安二郎の図像学
『構図の端正、厳格な点と美しい色の世界にひかれる』ー小津安二郎ー
こちら行きたかったなぁ〜
書籍も何冊か手に取っています。
監督の美術を支えた方は誰かと思い...
小津安二郎に憑かれた男―美術監督・下河原友雄の生と死
で、この三冊を。
完本 小津安二郎の芸術
佐藤忠男さん、本年3月17日に肉体を離れたこと、知りました。奇しくも3月17日、私の誕生日に〜91歳にて。
物心つくかつかないかの頃から映画が大好きで、中学1〜2年生の頃、映画評論家になるにはどうしたらよいのか?なぜ、知ったのか記憶がありませんが、佐藤忠男さんに手紙を書いたことがありました。その後、ご丁寧にも子どもの私に返事を届けてくれました。
とても印象に残っているのは、たぶん、「お忙しい時にすいません。」と書いた文章に対して優しい言葉で「すいません、ではなく、すみません、が、正しい書き方ですよ。」と教えてくれ、たくさん映画を観ること、本を読むこと、日常で感動すること、そして、日本語を学ぶこと→これのみ、勉強かと思い、手をつけませんでしたが...:)あらためてこの場をお借りして、「ありがとうございます」とお伝えさせていただき、あの世でも、映画、あるのかなぁ?引き続き、大好きなこと、お楽しみ下さい。
合掌。
さて、最後にも小津安二郎さんのこの言葉を。
『ひとには同じように見えても、僕自身はひとつひとつに新しいものを表現し、新しい興味で作品に取りかかっているのです』
さらに、極めつけ
『なんでもないことは流行に従う。重大なことは道徳に従う。芸術のことは自分に従う。』
超共鳴します。
引き続き、なんでか、古くならない、細部にハマる小津監督作品、楽しみたいと思います。