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「民族の危機」岡潔 解説:横山賢二
【30】明治維新に10倍の危機 (日教組の行動は計画的反逆)
*TAO LABより
2日ごとに転載していた「民族の危機」、この30回目をもって新聞連載記事は終了となります。当時は明治100年、51年前のことです。
昨年、2019年はさらに50年が経過し、明治150年でした...明治151年目となる本年2020年は世界人類にとって驚くような出来事が起こり、続いています。
50年経った今だからこそ、岡先生が訴え伝えたかったこと、あらためて耳を傾け、またそこから感じたことを実践する時代が訪れたように思われます。
*昭和44年(1969)1月 - 2月 大阪新聞より
日教組等のしていることは、国に対する計画的反逆である。人類進化の現状は、どの民族も生存を続けるために強固な国を造ろうとしているのだから、日本もそんな馬鹿なことはやめて、一致して国を固めて欲しい。
社会党等の真に望む所は、国民一人、一人が本当に生き甲斐を感じて生きることだろう。本当に生き甲斐を感じて働けば最早労働者階級ではない。だからこうなれば労働者階級という不幸な人達は無くなるのである。私はそれを欲している。
教育もどうすればよいか実地に見てわかったのであるから、その通りにしようではないか。そうすれば24年振りに、高らかに「絶域花は稀ながら、平蕪の緑今深し(晩翠)」と叫べるのである。
人類は形の向上を一通り終って、心の向上の段階にさしかかっている。それでこれまで向上に役立って来たものが大抵これからの向上の邪魔になる。それで菩薩道を釈尊が教えて以来2千数百年になるが、人類は仲々それが行えなかったのである。しかしいよいよそれを行わなければ(200年を出でないで)自滅しそうになって来たから、段々行えるようになるだろう。
日本の危さも明治維新の前夜に10倍するから、こんな時ならば菩薩道を説いても聞いて貰えそうである。まず日本がよい国を造って、世界の国々に手本を示すことが、人類を自滅から救う手始めだと思う。
*解説30
2014.06.11
「人類は形の向上を一通り終って、心の向上の段階にさしかかっている」と岡はいっているが、「形の向上」とは進化論が示すように今日の我々の肉体と、それに宿る「第1の心(自我)」の世界を頂点とする向上のことである。ここが現代文明に象徴される物質主義、個人主義の世界であり、またここは今見るように何れ必ず行き詰まる世界である。
一方「心の向上」とは概ね「第2の心」の世界への向上のことであって、この世界は既に東洋の仏教や儒教などが不十分ながら説いているのであるが、ここは肉体や時間空間を出離れた「心そのもの」の世界であり、岡にいわせれば東洋思想(第8識、第9識)を越えた「第10識、真情の世界」への向上のことである。
だから岡はここでは「菩薩道」という言葉を使っているのだが、これ以後岡は仏教の世界を突き抜けるため、この言葉は次第に使われなくなる。
それはともかく、明治維新は日本の存亡をかけた「大転換点」であったことに間違いはないのだが、更に広い視野で見てみれば、それは西洋の侵略を先ずは物理的に止めるという、いわば「前奏曲」に過ぎなかったのであって、実はこれからが本番の人類の未来をかけた日本が主演の「大舞台」となるのである。
つまり「今は日本民族の自覚時代だ!」と岡がいうように、今まで無自覚だった日本人が自らの心の構造を自覚し、確固とした哲学、理念によって新しい文明(政治、経済、教育、学問、芸術、宗教等)を世界に先駆けて切り拓いていく。
そして岡が最後に書いているように「まず日本が良い国を造って、世界の国々に手本を示すことが、人類を自滅から救う手始めだ」ということになるのである。