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おかねのしくみ by 新藤洋一

第4回 金はいつどこで作られたのか その2

太陽光のスペクトルを分析すると、太陽には水素とヘリウム以外の多くの物質が存在していることが分かります。太陽の中心では、水素が核融合をすることでヘリウムが生まれています。寿命を迎えても酸素(8)までしか作り出すことのできない太陽に、酸素より重い元素が存在しており、金(79)も確認されています。
*( )内の数字は原子番号です。

星(恒星や惑星)は、宇宙に漂うちりやガスが寄せ集まって誕生します。そのちりやガスの中にすでに多くの物質が存在していたことになります。当然その中に金もあり、地球上の砂金や金鉱石の元になっています。

これらの物質は、太陽系ができる以前に、太陽よりも遥かに大きな恒星が、その一生を終えて大爆発を起こした際に生み出され、爆風によって宇宙空間に拡散していったものです。

大昔より、夜空にひときわ光る星が観測されることがありました。後に「超新星(supernova)」と名付けられたこの光は、実は新しい星ではなく、巨大な恒星が最期を迎えたときの爆発現象だったのです。

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【星雲は星の大爆発の残骸で、さまざまな物質が生まれて宇宙空間へ放出されます Wikipediaより引用】

太陽クラスの恒星が終焉を迎えると、その中心は2億度になり、ヘリウムが核融合して炭素や酸素が生み出される、と前回説明しました。この超新星クラスになると、爆発の直前には中心部が50億度までになり、鉄(26)までの元素が作られます。
その後の大爆発のエネルギーで、さらに重い元素が作られるのですが、それでもまだ金には届かないようです。

2017年8月、大きな発見がありました。

<以下転載>
重力波天体が放つ光を初観測:日本の望遠鏡群が捉えた重元素の誕生の現場
―重力波を追いかけた天文学者たちは宝物を見つけた―
重力波天体を追跡した天文学者たちは、キロノバを世界で初めて観測的に発見しました。太陽の1億倍も明るくて、地球の全質量の何千倍もの量の重元素や貴金属を作り出す、原子核反応のかまどです。
国立天文台NAOより

金などの重たい元素を生み出せるエネルギーは、一体宇宙のどこに存在するのか。一つの可能性として、中性子星同士の衝突が考えられていました。中性子星は、超新星(爆発)によってその中心核が圧縮されてできる星で、約十キロの直径にスプーン1杯で数十億トンという重たい物質でできています。
この中性子星同士が衝突して起こる大規模な爆発現象がキロノバ(注1)であり、それが初めて観測されたのです。この巨大なエネルギーが金などの重たい元素を大量に生み出しているのです。

星の大爆発で宇宙空間に広がった物質は、別の星々の爆風によって濃縮され、そこから新しい星が誕生します。長い時間をかけて星の生と死が生み出した90以上の物質が、また集まって太陽や惑星を作り出し、そこに生命が誕生し、人類が生まれ、金を手にすることになったのです。


(注1)キロノバ
*天文学辞典


*プロフィール
作農料理人 人類研究家
新藤洋一(しんどうよういち)
1963年群馬県生まれ
1991年脱サラ後、飲食業を営みながら食糧とエネルギーの自給に取り組む。
自給生活の様子は「自給屋HP 」に掲載中。
(自給屋としての営業は2018年12月ですべて終了します)

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