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全人教育論

「教育の内容には人間文化の全部を盛らねばなりませぬ。故に、教育は絶対に全人教育でなければなりませぬ。全人教育とは完全人格即ち調和ある人格の意味です」〜小原國芳〜

 小原國芳著『全人教育論』(玉川大学出版部発行)の冒頭にこのような一文が記されている。國芳は、従来の日本の教育には、人間教養が欠けているとし、全人教育によって、偏重した教育を正道に戻し、真実の人間性を伸ばそうと考えた。特に従来の教育に欠けていた道徳教育、芸術教育、宗教教育、労作教育などを重視した。

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全人教育論
小原國芳:著

*全人教育
 國芳は、人間形成には真、善、美、聖、健、富の6つの価値を調和的に創造することが必要であるとし、それは学問、道徳、芸術、宗教、健康、生活の6方面の人間文化を、豊かに形成することと考えた。また、真・善・美・聖を「絶対価値」とし、健・富を「手段価値」と位置づけた。そして、この6つの価値を有した人間、6つの価値を統合した人間を、國芳は「全人」と呼んだ。國芳はそのことを『全人教育論』の中でつぎのように記している。

「人間文化には六方面があると思います。すなわち、学問、道徳、芸術、宗教、身体、生活の六方面。学問の理想は真であり、道徳の理想は善であり、芸術の理想は美であり、宗教の理想は聖であり、身体の理想は健であり、生活の理想は富であります。教育の理想はすなわち、真、善、美、聖、健、富の六つの価値を創造することだと思います。」

 その教育の理想を実現するために、全人教育、個性尊重、自学自律、能率高き教育、学的根拠に立てる教育、自然の尊重、師弟間の温情、労作教育、反対の合一、第二里行者と人生の開拓者、24時間の教育、国際教育といった教育12信条を掲げて、玉川学園は総合学園として一貫した教育研究活動を実践している。さらに実践にあたって、「人生の最も苦しい いやな 辛い 損な場面を 真先に微笑を以って担当せよ」という玉川モットーを掲げている。

*全人教育と個性尊重の教育
 全人教育と個性尊重の教育について、國芳は『全人教育論』の中でつぎのように記述している。

「決して、この二つは矛盾ではないのです。この二つが一つに融化せねばなりませぬ!完全なる個性発揮が実によき全人教育なのです。竹は竹の、百合は百合の、松は松の本性を、太郎は太郎の、花子は花子の唯一無二の本領を発揮した時が最も美しいのだと思います。実に教育とは、その全宇宙とも取りかえられない尊き自己を発見することであり、天の与え給う各人の天地を十分に生きることだと思います。 (略) よき全人教育、即ち豊かなる調和ある人格に伸びてこそ、偉大なる個性も培養、伸長するのだと思います。雄大にして豊かなる無限大の裾野があってこそ、神々しい荘厳なる富士の霊峰が現れるように、全人教育と個性尊重の教育は一物の両面なのだと思います」

*全人教育と反対の合一
 國芳は、反対の合一ということを、全人教育の立場から特に大事にし、つぎのように述べている。

「大胆で小心で、朗らかで淑かで、快活でたしなみがあって、気はやさしくて力持ちで、よく学びよく遊び、よく儲けて正しく費い、これらの二面を一つにした花も実もある立派な紳士に仕上げたいのです。コヤシを担げばピアノも弾け、拭き掃除もすればお茶や生花もでき、雑巾も綴れば絹の着物も仕立てられ、ドブ溝もさらえば第九シンフォニーも歌え、薪割りもすれば劇も絵も書もいたし、ソロバンもはじくがお経も繙ける玉川っ子にしたいのです。」

*全人教育が生れた日
 1921(大正10) 年8月1日から8日まで、東京高等師範学校(現・筑波大学)の講堂で、大日本学術協会が主催して八大教育主張講演会が開催された。講演を行ったのは國芳をはじめとした教育改革に深い関心を持つ人たちだった。その多くは、教育現場の陣頭に立ち、理論上・実践上の苦闘を経験した教員や師範学校教員であった。8人のうち、4人が30代、3人が40代であったことからもわかるように、壇上に立ったのはいわゆる「第一線で活躍する新人指導者」であり、教育学者は一人もいなかった。八大教育主張は、教育界における大正デモクラシーが花開いた瞬間であった。

 明治時代までの教育は、教師が中心となり、児童に学問を注入し、模倣させることをよしとしてきた。しかし、8人の論者は各自持論を展開、既存の教育に疑問を投げかけた。それぞれの主張には、当時の欧米の新教育思想や教授法の影響が見られるが、従来の教育学者のように翻訳紹介にとどまらず、自分の実践をふまえて自説を打ち出そうという意気込みが感じられた。また、8人の主張には、自由や創造性を尊び、成長の能力を重んじようとする児童中心主義の考えが中心にあり、その点で共通性があった。

 この講演会での最終日である8月8日に、当時34歳だった國芳が主張したのが「全人教育」である。「全人教育」の提唱は、「真の人間教育」の提唱でもあった。講演前、國芳は自身の理想の教育をどのように命名するか考えあぐねていた。主催者側からは「聖愛教育」ではどうかという提案があったが、國芳は満足せず、「文化教育」とも考えたがぴったりとこなかった。講演会の2,3日前にふとひらめいたのが「全人」(the whole man)という言葉であった。「全人教育」という言葉が聴衆の前に提示されたのは、この講演会が初めてであった。それから8年後に全人教育を教育理念とした「玉川学園」が設立された。

〜以上玉川学園HPより転載

*TAO LABより
 10代前半、中学生の時にこの書籍に出会い、完全にノックアウト!!!
シュタイナー教育も素晴らしいと思いますが、「和」の国、日本には全人教育がある...大人になってあらためて知った"教育"や"理念"の大切さ。思春期〜最初に植え付けられた"理念"はこれでした。ラッキーだとつくづく今、思います。

 本来、教育とは学校で学ぶものではなく、また頭のみで学べるものではないと思います。
それは体験です。また体験だからこそ、その機会を創ること、それを伝える方の体験と実践=人間性+生き様をリアルに見せることが大切です。これは"大人"の役目。
そしてなによりも学びたい方自らが扉を叩き、開けることがとても大切です。

 全人教育の理念は玉川学園だけのものではなく、どこの国でも、どの時代でも通用する普遍的な教育理念だと思います。

 10代の頃は若すぎて腑に落ちてなかったけど、30歳過ぎてからは"自由研究"と"労作"しか出来なくなったのはこの理念に感染発熱しちゃった結果???だったら望むところ、有り難いですね!

「聖真善美健富」が世界に広まり、また、その実践体験が出来ますように。

PS.
 國芳先生からいただいた名言はいくつもあるけど、これ、自分には最高に響きます。

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「余り多くの人が、功利的だ、利巧すぎる、打算的だ。クヨクヨしている。ケチケチしている。目先がききすぎる。私はバカが欲しい、大馬鹿が。ちょうど三月、成城の卒業生が、第一回生が卒業する時だ。卒業生の一人が、一生、座右に置く教訓を書いて下さいというのだ。僕はさっそく筆太に"バカになれ、バカになれ、大馬鹿に"と書いてやると、件(くだん)の生徒はビックリしたが、やや久しくして、わかってくれたようだったが、ホントに、ホントの大馬鹿が欲しい。」〜小原國芳〜

注:國芳先生は玉川学園を創立する前は成城学園を創ったひとりだった。

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